Isabel Nolan “clocks and seasons and promises”

PAST 12. 12. 2010 - 01. 14. 2011

この度、2010年12月10日より、現在最も注目される若手アイルランドアーティストの一人であるイザベル・ノーランの日本での初個展をGallery Side 2にて開催致します。

アイルランド・ダブリンに生まれ、現在もダブリンを拠点に活動しているイザベル・ノーランは、ペインティング、ドローイング、彫刻、アニメーションや、近年では刺繍や布の壁掛けなど多岐に渡るメディアで作品を制作しています。その作品は、アイルランドの主要な現代美術美術館やギャラリーでの個展をはじめ、ヨーロッパを中心に数々の国々で発表されて来ました。また、2005年にはアイルランドを代表するアーティストとしてベネチア・ビエンナーレでのグループ展にも参加しており、新しい世代の抽象表現として国内外から大きな注目と関心を集めています。

円や球体といった図形をモチーフにやわらかな色彩で丹念に紡がれていくノーランの作品は、抽象画の伝統や、近代以前のアーツアンドクラフツ運動で提唱されたデザイン美への造詣や親しみを感じさせつつも、より自由な発想で物作りを捉えることにより、現代の空気感を鮮やかに映し出しています。

控えめなスケールで表現される作品は、重厚な彫刻然としたものではなく、いつの時代も人々が対峙してきた、孤独やフラストレーション、こぼれ落ちていく一瞬、束の間の希望や恐れなどといった内的な要素を、情感豊かに繊細かつシャープに表現しています。

人間の持つ感情のひだが揺らめく遠近感や不完全なる直線の中に浮かび出され、それを包み込むノーランの眼差しに深遠な温もりを見出す事ができます。そして、その温もりこそが彼女の知的でユニークな作品を際出ったものにしていると言っていいでしょう。

今回の展覧会では、新作の彫刻と絵画、ドローイングが展示されます。タイトルにされている“clocks and seasons and promises”は、「ゲド戦記」の作者でもあるアーシュラ・クローバー・ル=グウィンの小説「所有せざる人々 The Dispossessed」からの引用で、「時間は循環するもの、または線状に続いていくものであるという認識無しには語り手は物語を紡いでいくことはできない」という意味が込められています。

新進気鋭のアイルランドアーティストが紡ぐ人々の物語のかけらをこの機会に是非ご高覧下さいませ。